大判例

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東京高等裁判所 昭和38年(行ナ)123号 判決

一 本件商標の権利者、その構成および登録までの経緯、登録無効審判および抗告審判の各手続の経緯ならびに抗告審判の審決内容に関する事実(原告請求原因一から三の事実)は、いずれも当事者間に争いのないところである。

二 そこで原告主張の標章の周知性についてみるに、その成立に争いのない甲第六号証の一ないし三、第七ないし第九号証、第十ないし第二十四号各証の各記載および弁論の全趣旨によつてみるも、原告が昭和三十一年三月から昭和三十二年三月までその製造する商品石油コンロおよびその芯について原告主張のような標章を使用して販売する事業を営んでいたことを推認しうるに止まり、さらに進んで、本件商標の出願時においてはもちろん、登録時においても、すでに周知標章として広く認識されていたことを認めることはできないし、また甲第五号証は川崎商工会議所の証明書ではあるが、かような抽象的な一片の証明書によつて原告主張の周知著名の事実を認めることはとうていできないところであり、ほかに右事実を認めるに足る証拠はない。

以上のように原告の主張する事実のうち周知性についてその立証を欠くので、そのほか原告主張の標章を使用する商品と本件商標の指定商品との類否その他の点について、判断をするまでもなく、原告の主張に理由なきに帰する。

三 結局原告の主張は理由がないので、その請求を棄却する。

〔編註その一〕本件における当事者の主張は左のとおりである。

原告の請求原因(中略)

原告は右のように前記標章をつけた商品石油コンロおよびこのコンロに使用する燈芯については多数の外交販売員の動員に加え、販路を地域的に集中した宣伝と販売方法を採用した結果、忽ちにして原告の所在地である川崎市およびその周辺を中心とする地域ならびに神奈川県一円においては絶対の信用と不動の販路を確保し、ひろく各階層と取引者間に認識されたものである。このことは昭和二十七年九月ころから昭和三十年三月ころまでの時点が石油コンロのもつとも普及発展した時期であつた時代的幸運に恵まれたこともその大きな原因であるが、その原因あるいは理由のいかんにかかわらず原告の使用する標章の周知性を否定されるものではない。故に、このような周知性との関連において本件商標がその指定商品に使用されるときは、当該商品を目して、あたかも原告の商品であるかのように、あるいは原告と特殊の関係にある者の商品であるかのように取引者および需要者の間に誤解を与えることは必至で、いわゆる商品の出所について旧商標法第二条第一項第十一号に規定する「商品ノ誤認又ハ混同ヲ生セシムルノ虞アルモノ」に該当する。

以上のように、本件審決が原告の主張を排斥したのは事実の誤認と法律の適用を誤つたものとして、取消されるべきである。

被告の答弁

一 原告請求原因一から三に記載の事実は認めるが、その余の主張は争う。

二 原告は、その主張する標章が、原告販売の商品石油コンロおよびその芯について周知であつた旨主張するが、営業地域と主張する川崎市には都市ガスの施設もあるから、地域的にはその一部の極めて限られたところであろうし、またその場所柄からみても有名メーカーの商品も同時に時代的幸運に恵まれ、これらの商品が氾濫競争したであろうことは推測に難くないところである。

のみならず、原告はその主張する標章を石油コンロおよびその芯に使用した旨主張するが、被告の本件商標の指定商品は、「燈器およびその各部」であつて、原告主張の商品は含まれていない。すなわち、燈芯は石油ランプにおいて光源として用いられるのに対し、石油コンロ用芯は、いわゆるコンロすなわち煮沸用の熱源として用いられるのであつて、使用目的および芯の構造形状(燈芯は細幅のひも状、石油コンロ用芯は大幅の筒状である。)および大きさを異にし、ことに、現代社会生活において、石油ランプは主として船燈などの特殊な分野において使用されるのに対し、石油コンロ用芯の用いられる石油コンロは原告の製品についていえば主として一般家庭における煮沸用に使用され、その間に極端な隔たりがあつてその区別も劃然としており、しかもこのような相違点から、これに用いられる芯のメーカーおよび販売経路をも異にし、石油ランプ用芯は船燈品等照明器系販売商およびガラス器系統の業者の取扱が主であるのに対し、石油コンロ用芯は石油ストーブ等の燃料系統の販売業者および金物系統の業者の取扱になつており、取引の実情取引通念に徴しても類似の商品には該当しない。

三 被告は、昭和九年以来石油ランプ芯を製造販売し、「ルビー」という商標は当初から現在まで引続きランプ芯に使用して来ているものである。とくに終戦後はランプ芯の内地向および輸出向の専門メーカーとして、取引者および需要者に広く知られ、周知著名となつているから、かりに原告主張の事実があるとしても、旧商標法第二条第一項第八号あるいは第十一号に該当するとはいえない。

〔編註その二〕本件に関する商標は左のとおりである。

本件商標の形状構成

<省略>

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